鶏は夜、みんなで楽しく絞めるもの

 
夜、この宿の家族が鶏を二羽、絞めるのを見物した。

中庭でやっていたので、二階の廊下の手摺りに寄りかかって見下ろした。
一羽は、すでに絞められて、三番目の娘、6歳くらいが脚を持ってぶら下げていた。口から血が滴り、コンクリートの床に滲みていた。

もう一羽を女中が絞めていた。二階の廊下から見下ろしている母親が「お湯をー」などと、指示する。
ポリバケツに入ったお湯が持ってこられた。三女が手にぶら下げていた鶏がバケツに頭から沈められた。とたんに鶏は、水しぶきを上げて暴れた。

しばらく、漬けていたが依然、鶏は暴れるので、宿の門前を借りて物売りをしていた婦人が呼ばれた。彼女は、鶏をお湯から出して、入念に絞め直した。
「生きてるよ!」締めながら言った。バタバタする鶏の様子を若い女中に見せながら言った。「まだ生きてるよ!」
タオルを絞るように鶏の首を何回も捻り、首は半分ちぎれた。そしてもう一度、その鶏をお湯の中に漬けた。

 

お湯から上げると、姉娘と女中の手で、二羽は、瞬く間に裸にされてゆく。お湯に漬けるのは、羽をむしりやすくする為なんだな。次女がデッキブラシで羽と血を洗い流す。
総員わいわいの中で、二羽の鶏は、丸裸になった。男の子たちは、一切関与しなかった。


2010年5月

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